会長御挨拶
日本財務管理学会(以下、本学会)は2020年(令和2年)において創設30周年を迎えます。本学会の設立は1990年に遡ります。当時はバブル経済の後、その崩壊による経済の低迷期でもありました。その後、「金融ビックバン」といわれる金融制度改革が行われ、経済の枠組みも大きく変化しました。こうした社会情勢の目まぐるしい転換を目の当たりにして、多くの複雑、多様な財務的課題が噴出しました。これらの課題を解きほぐすため企業の財務管理を基軸として経済学、会計学、証券経済論、企業法学、税務会計論などから学際的協同をする必要があるとの理念により本学会は創設されました。
この失われた10年から脱却するために、本学会においてベンチャー、会計・税務制度、原価管理、(非)財務情報、企業統治(コーポレートガバンス)、企業価値と財務政策、資金調達、資産運用等のテーマを財務管理の視点で歴史と未来、企業と市場、日本と国際比較等のアプローチを通して理論・実証・事例の多くの研究報告がなされ、盛んに議論が行われました。これに呼応して学界、実務界を含む多様な研究者が参加して頂きました。こうした学際的協同という理念は現在でも息づいております。
21世紀になって、かって経験したことのない経済・自然災害イベント(2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災や福島第一原子力発電所事故)に直面しますと、本学会の創設趣意がいかに先見性のある見識であったことがわかります。すなわち、これらのイベントの下では財務管理という視点に立脚して多様なアプローチをしなければ問題提起、分析、解決の提示が難しことは容易に想像できます。これまで本学会の伝統の学際的協同と研究領域の多様性を特徴とした活動は多くの賛同と成果を得ることができました。それは、経済情勢に伴う研究環境の厳しさが増す状況下にも拘らず、本学会の会員数や学会年報「財務管理学会」の掲載本数は着実に増加・充実し、発展しています。特に若手研究者に論文を投稿する機会を積極的に提供しようとする試みは学会に新たな学問的息吹を与えかつ、活性化を促しています。こうした本学会の発展は、これまでの歴代会長をはじめとして、それを支える理事・各委員会の関係者各位のご尽力・情熱の賜物であることも忘れてはなりません。
寺田寅彦の「天災は忘れた頃にやってくる」の警句を待つまでもなく、まさに3.11大震災の記憶が次第に風化しつつあるとき、近代史上かってない新型コロナウイルス感染が日本を含む世界各国に蔓延して地球規模の未曽有の危機に瀕しております。ついには経済危機に及んでおります。これまで本学会が議論で培ってきた地球環境を視野にした持続的可能な成長を資するというコンセプトを基礎にアカデミックと実務の結合を通して、危機脱出のための研究成果を今まで以上に社会に発信することが本学会の使命であると考えます。本学会の活動はまさに日本学術会議が標榜した「科学のための科学」から「社会のための科学」への体現化にほかなりません。創設30周年記念にあたり、本学会が新たに立ち向かうべき課題に向けて会員の皆様と共に歩んで行きたいと思います。これまで以上のご協力とご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
日本財務管理学会 会長
市村 誠
主な活動事業
日本財務管理学会では、学界人と実務家の協力のもとに、本学会会則第2条の目的を達成するために、以下の活動を行っています。
1.春季及び秋季全国大会の開催
研究発表と、学界人と実務家の交流を目的として、春季及び秋季にそれぞれ1回全国大会を開催致しております。
2. 研究会の開催
定期的に「学会研究会」を開催致しております。
3.研究年報その他刊行物の編集および発行
研究年報や学会ニュースその他の刊行物を発行致しまして、会員の皆様にお届けしております。